2016/04/14

西洋オダマキその2
強い雨と風の中、両手で傘を持って歩いた。足元はびしょびしょになるし、何度か傘を持っていかれそうになる。
もう、10年近く前のことになるのかな、台風で水浸しの中を傘を差すことも諦めて歩かなければならないことがあったのを思い出した。信じられないほどの強風で木が倒れていたり、水が溢れ出しているところを友人の車まで必死で歩いたのだった。
その時のことを詳しく書こう思って歩きながらいろいろ思い出していたら、あの頃が人生のピークだったと思わずにはいられなかった。ストレスで円形脱毛ができたこともあったけれど、必要とされるからこそ精神的にも肉体的にも充実していたし、胸の奥の泉には水がこんこんと湧いていた。
それに比べると今は……と、つい比較して切なくなりそうになって、うんにゃ! それは違うぞと、傘の柄を強く持ち直す。あの頃は本当にしあわせだったねえ、そういう時があってよかったねえ、いい思い出だよねえ、その思い出があることが今は幸せだよね、そうだよね、ねえ、ねえ、ねえ。
ふくらはぎに濡れて張り付いたジーンズが冷たい。
バス停に立っていると、屋根に当たる雨音がトトトトトトトトと聞こえた。面白いなあと見上げてはじめて、まだ傘を差したままだったことに気がついた。後ろに並んでいた人にはさぞかし邪魔だっただろう。ごめんなさい。